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犬の中毒とは?
毒になるものが体内に入ることで、体の組織や機能に障害がでることを中毒といいます。
中毒になると激しい嘔吐や下痢を繰り返したり、痙攣を起こしたりします。
重度の場合は、口から泡を吹いて昏睡状態になったり、呼吸困難で死に至る場合もあります。
これらの症状は他の病気でも起こり得ます。そのため、獣医師が症状だけを見て、中毒なのか他の病気なのかを判断するのは非常に難しいです。
「散歩中に何かを食べた」「家でシロアリ駆除をしたら症状が出た」などの飼い主さんからの情報も非常に大切です。
動物病院へ行く時は、中毒の原因と思われる物(犬が食べてしまった物など)を持参しましょう。
例えば人間用の薬であれば、その薬の成分を獣医師が見ることで適切な治療を行うことができます。
なぜ中毒になる?
中毒症状を起こす原因は、中毒の原因となる物を
- 舐める・食べる・飲む
- 鼻から吸い込む
- 皮膚から吸収する
ことが原因となります。
犬(特に子犬)は好奇心が旺盛です。
犬は目の前の物が有毒かどうかの見分けがつきません。
知らない物でも舐めたり食べたりしてしまうので注意が必要です。
また、いつもの散歩コースで除草剤や殺虫剤を使用していて、飼い主も犬も知らないうちに有害物質を吸収していることもあります。
中毒の症状
中毒になると主に以下のような症状が出ます。
- よだれをたらす
- 口から泡をふく
- 嘔吐
- 下痢
- 痙攣(けいれん)
- 呼吸困難
- チアノーゼ(酸欠で口の中が暗紫色になる)
- おしっこをもらす
- 昏睡
- 死亡
注意すべき点は、これらの症状はすべて中毒が原因とは限りません。
他の病気でも起こることがあることを知っておきましょう。
中毒になってしまう食べ物
ネギ
ねぎ類に含まれるアリルプロピルジスルファイドという物質が血液中の赤血球を破壊し、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)を引き起こします。
アリルプロピルジスルファイドは、煮ても焼いても消滅しません。そのため、玉ねぎが入っていたすき焼きの汁を与えただけでも、犬は中毒になるので注意が必要です。
アリルプロピルジスルファイドはしょうが・ニンニク・らっきょうなどにも含まれます。
また、どれくらいの量のネギを食べてしまったら中毒を起こすかという点については、
犬の体重1キロ当たり、15~20グラムの玉ネギを食べてしまうと中毒を起こすと言われています。
しかし、実際にこの量を食べても症状が出ない犬もいますし、これ以下のごく少量でも症状が出る犬もいます。
チョコレート
犬はチョコレートに含まれているテオブロミンという酵素を分解できず、摂取すると中毒になってしまいます。
摂取すると嘔吐や下痢の原因となり、最悪の場合は命を落とすこともあります。テーブルの上にチョコレートを置いたままにするなどしないようにしてください。
キシリトール
犬がキシリトールを食べると、低血糖(血液中の栄養素であるグルコース濃度が低くなる)状態になります。
キシリトールを含んだガム1枚でも危険なので注意してください。
犬に人間用のガムを与える人はなかなかいないと思いますが、犬に歯磨きをしてあげる時に、人間用の歯磨き粉を使用してしまうとキシリトールが含まれている場合があります。歯磨きには犬用の歯磨き粉を使用しましょう。
ブドウ、レーズン
ブドウやレーズンを犬が食べると、嘔吐や急性腎不全を起こす可能性があります。また、最悪の場合は死亡することもあります。レーズンを含んだパンで、レーズンを含んでいない箇所を与えることもしないようにしてください。
解熱剤などの薬(人間用)
解熱鎮痛薬に含まれるアセトアミノフェンは、少量でも中毒症状を起こします。
また関節炎、生理痛、発熱、炎症部位の鎮痛に用いるイブプロフェンを含む薬も少量で中毒症状を起こします。
犬が人間用の薬を飲んでしまった場合は、飲んでしまった薬を持って動物病院へ行きましょう。
食べ物ではないが、中毒になってしまう物
不凍液・冷却水(エチレングリコール)
不凍液は、凍結防止用の液体です。一部の車のエンジンや、住宅用暖房に含まれています。
この不凍液にはエチレングリコールが含まれていて、犬が好む甘い味がします。
エチレングリコールを犬が摂取すると主に腎臓に障害が発生します。
洗剤
トイレ用洗剤、食器洗浄器用洗剤などは腐食性物質を含む製品が多いです。
腐食性物質を犬が口にしてしまうと、数分以内に口やのどの痛みが起こり、せき、よだれ、息切れ、呼吸困難をきたします。
洗剤本体を口にしてしまう機会は少ないかもしれませんが、ごはん用の器などを洗剤で洗った場合は、洗剤をしっかり落とすようにしましょう。
石油製品
ガソリン、灯油、塗料シンナー、接着剤などの石油製品には、炭化水素が含まれています。
炭化水素を犬が摂取してしまうと、のどの痛み、呼吸困難、激しい咳、チアノーゼなどの症状が出ます。
殺虫剤
塩素系殺虫剤
ダニを殺すために使用されることがあります。トリクロロフォン、ナラチオン、ロンネルという成分を含んでいて、口から摂取すると中毒を引き起こすことがあります。
有機リン系殺虫剤
犬のノミ取り首輪などにも含まれていることがあります。
ノミ取り首輪は通常の使用では中毒は起こりませんが、薬品に多量にふれる状況で使用すると、中毒症状が現れることがあります。
ノミ取り首輪が長いからといって二重に巻いたりしないようにしましょう。
長い場合は犬の首の太さに合わせてカットすることをオススメします。
また、使用する前にパッケージから出し、24時間程度してから使用するとより安心です。
ホウ酸
ホウ酸は、最近はゴキブリやアリの駆除を目的とした殺虫剤に含まれています。
犬が間違ってこのホウ酸を食べると、中毒症状が起こることがあります。
ホウ酸による中毒の主な症状は、胃腸系の障害、緑青色の吐物や下痢です。
殺鼠剤
ネズミの駆除を目的とした殺虫剤で、ワルファリン、タリウム、メタアルデヒド(ナメクジ駆除剤)などを含みます。
ワルファリン
ワルファリンは犬の場合、体重1kg当たり5~50g以上摂取すると中毒症状を起こすとされています。
また、一度に摂取しなかった場合でも、1日に1~5gのワルファリンを5日間以上継続的に摂取すると中毒症状を起こすといわれています。
ワルファリンが動物の体内にはいると、血液の凝固機能が妨げられます。
中毒症状としてはさまざまな部位の出血です。鼻血、吐血、血便、血尿などもみられます。
メタアルデヒド
メタアルデヒドは、カタツムリやナメクジなどの殺虫剤でも使用されています。
主に植物に直接散布して使用されるため、園芸をしている箇所の葉っぱなどを食べないように注意が必要です。
中毒症状としては、興奮状態になり、よだれを多くながすこともあります。
また、摂取してから1~2時間すると、運動失調・呼吸困難に陥ってしまいます。
除草剤
除草剤は皮膚を通して吸収されます。
また、足の裏についた除草剤を舐めることで中毒を起こすこともあります。
除草剤をまいているような箇所は歩かせないようにしましょう
中毒症状としては運動失調、痙攣が起こります。重度の場合は腎不全・呼吸困難を起こします。
除草剤をまいたかどうかは分かりづらいので、普段からできる中毒予防方法として、散歩後には足をよく洗ってあげましょう。
その他、与えない方がいい食べ物
タケノコ・シイタケ・ピーナッツ
犬にとっては消化が悪いといわれています。
エビ・カニ・貝類・イカ・タコ
タケノコなどと同様に、消化に悪いといわれています。
アルコール
人間と犬の体の大きさは違いますので、人間にとっては許容量のアルコールでも犬にとっては有害になります。
牛乳
人間も同じですが、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)を持たない犬もいます。
ラクターゼを持たない犬は、牛乳をうまく分解できず、下痢を起こしてしまいます。
人間用の牛乳ではなく、犬用のミルクを与えるようにしましょう。
中毒になってしまった時の対処方法
毒性のある物に触れた場合
すぐに大量の水で洗いましょう。ぬるめのお風呂に入れるのもいいです。
可能であれば、飼い主さんも手袋などをして自分も守りましょう。
そして水を(飲むようなら)飲ませましょう。
動物病院へ行くのも忘れずに!
毒性のある物を食べた場合
犬は安静にさせ、食べてしまった物を持って早急に動物病院へ行きましょう。
中毒症状を引き起こす物を食べた後、2時間以内であれば催吐処置が有効な場合もあります。